福田広樹(総務省勤務|21期生)

イートン校交換留学がきっかけで国際的な政策立案を

取材・文/木崎ミドリ

プロフィール

2013年7月英国イートン校交換留学(SFC中高在学中)
2016年8月英国オックスフォード大学サマースクール
2017年2月米国スタンフォード大学国際交流事業
2017年12月 国家公務員総合職試験教養区分合格(在学中合格)
2019年3月慶應義塾大学法学部政治学科卒業
2019年4月総務省入省(総合職事務官)
2023年9月英国LSE(ロンドンスクールオブエコノミクス)大学院在学中

私は今、霞が関の行政官長期在外研究員の制度を利用して、英国のLSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)大学院に留学しています。英国での2年間で、ダブルマスターの取得を目指しています。

LSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)にて


そして、留学2年目は、オックスフォード大学大学院への進学が決まりました。

英国への留学はこれで3回目になります。最初の留学を経験したのはSFC中高在学中でした。高校2年生の夏休みにSFC中高と英国イートン校との交換留学に挑戦しました。ここでの経験が、私のその後の進路に大きく影響しています。

イートン校は1440年にヘンリー6世が創設した歴史あるパブリックスクールです。イートン校の学生は、将来リーダーとして社会に貢献していきたいというビジョンを各自が持っていて、それに比べて私は、将来についてまだ漠然としたイメージしか持っていませんでした。

SFC中高時代は水泳部の活動で忙しく、学校へ行き泳いで帰ってきて毎日が過ぎ去っていきました。留学については、違う世界を見てみたい」という好奇心から挑戦することにしました。しかし、そこで将来についてしっかりと語るイートン校の学生に圧倒され、大きな刺激を受けました。

■情報通信と国際性をテーマにダイナミックな仕事を

最初の留学をきっかけに「将来、国際的な仕事をしてみたい」という思いがとても強くなりました。私は帰国子女ではなく、中学に入って初めて英語を学びましたが、クラスメイトには帰国子女が多く、また、ネイティブスピーカーの先生も多い環境で英語を学ぶことができました。授業ではエッセイを書いたり、英語の劇をしたり、ディベートをしたりとアクティブに英語を勉強できる環境がありました。

実際に海外へ出ても使える実用的な英語を学ぶことができました。SFC中高では英語に限らず、さまざまな授業の中でプレゼンテーションやディスカッションをする機会も多くありました。そのひとつひとつが現在の留学にも活きていると思う場面がたくさんあります。

また、SFC中高は情報教育にも非常に力を入れている学校なので、私が今、情報通信を専門分野にしていることは、SFC中高の環境があってこそのものだったと感じています。

SFC中高での英語教育、情報教育、国際交流がなければ、今の自分はなかったと感じています。

■海外で活躍できるフィールドに惹かれて

イートン校への交換留学をきっかけに大学2年の夏休みに英国オックスフォード大学のサマースクールに参加しました。さらに春休みには、米国スタンフォード大学の国際交流事業に挑戦しました。スタンフォード大学の学生と共同プロジェクトを行い、シリコンバレーのIT企業を訪問するなど、とても貴重な体験をすることができました。

大学時代、米国スタンフォード大学国際交流事業にて

3つの留学経験を通じ、「情報通信の専門性を高めつつ、国際的な仕事をしたい」という気持ちが芽生えました。留学から戻り、大学3年生の12月には国家公務員総合職試験(教養区分)に合格したのですが、官僚のみに絞るのではなく、民間企業を含めて就職活動を行いました。

結果として、民間企業5社からも内定をいただいたのですが、霞が関の省庁の中でもダイナミックな政策立案に携わることができる総務省に魅力を感じ、総務省1本に絞って官庁訪問をすることにしました。幸い総務省から内定をいただくことができ、現在に至っています。総務省には、例えばパリのOECD、ジュネーブのWTO、ブリュッセルのEU代表部など、海外の国際機関で活躍できるフィールドが広がっています。

■総務省の4年間で4ポストを経験

霞が関の総合職は1年から2年のサイクルで部署が変わり、幅広い経験を積むことが期待されています。私は、これまで総務省での4年間で4ポストを経験したのち、英国に留学しています。

1年目は国内の通信政策を担う事業政策課で、電気通信事業法という情報通信の法改正を担当しました。GAFA(Google、Apple、Facebook/Meta、Amazon)のような海外のプラットフォーマーと交渉を重ね、国民の皆さんが安心して情報通信サービスを利用できるように制度を整えていく仕事です。

2年目は政府全体の政策評価を行う部署で、EBPM(エビデンスに基づく政策立案)の推進を担当しました。一例として、文部科学省と連携して、デジタル教科書の教育効果を検証しました。3年目は総合職採用担当として、年間100回以上の説明会を通じて、何千人もの志ある学生の皆さんと出会い、総務省の仕事の魅力を伝える機会を得ました。

4年目は北米係長として、ニューヨークやワシントンDCに出張し、情報通信分野の国際交渉を担当しました。2023年は、日本がG7の議長国(ホスト国)であったため、G7デジタル技術大臣会合の現場にも参加しました。情報通信関係の国際会議では、アジェンダを設定し、成果文書の取りまとめに携わります。5Gや次世代の情報通信技術の国際競争力を高めるために、日本はどのように世界と連携していくべきか。自らのアンテナを高くして、国際情勢を深く洞察し、地球儀を俯瞰する交渉を行います。

■Ⅰ類とⅡ類の選択で悩んだが、決め手は自由研究

SFC中高の思い出のひとつとして、高校3年時のⅠ類(文系)・Ⅱ類(理系)の選択に悩んだことがあります。先輩方の卒業論文で、独自性のある素晴らしい発表をいくつも見てきたので、自分にも書けるのかという不安があり、また、理系科目も得意ではあったので、どちらにしようとギリギリまで悩みました。

最終的には自由研究の卒業論文を書き上げることが、大学以降の経験にも活きるという結論に達し、Ⅰ類を選びました。自分の好きなことを研究し卒業論文を書くという姿勢、好奇心の探求は、現在、LSE(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)での修士論文執筆にも活きていると思います。現在は、情報通信分野の規制政策を研究し、修士論文執筆に取り組んでいます。

情報通信や放送の規制政策、インターネットガバナンス、AI政策などを研究中で、今後の総務省の仕事に活かしていけそうです。

在校生へのメッセージ:

ありきたりかもしれないですが、SFC中高でできた友達は一生の友達になると思うので、大切にして欲しいと思います。働いている世界はお互いに民間企業、霞が関と違いはありますが、社会に出てからも定期的に会って刺激し合える大切な仲間です。どの先生とも思い出はつきませんが、先生方とは現在もFacebook、Instagram、LinkedInなどのSNSを通じて繋がっており、ここ英国に留学中も温かい励ましをいただくことがあり、SFC中高時代を懐かしく思い出します。

LSEのOld Buildingにて
LSEの授業風景
休日は美術館巡り(ナショナルギャラリー)にて
英国三田会に参加